先々週から読み始めたFACT FULLNESSを先日やっと読み終わった。最近はどうも集中して読めないので時間がかかる。困ったものだ。さて、読み終えて記憶に残ったことがいくつかある。一部を紹介してみたいと思う。

全世界の所得を把握しやすいよう4つのレベルで表現

自家用車
この本では平均的な所得を4つのレベルに分けてみている。レベル1は飢えることもあるし水を手に入れるのに数時間もかかるような「極度の貧困」である。レベル2は飢えることはなく水を手に入れるのに苦労はしない、子供が学校に行ける。レベル3になると水道があるし電気も来ており冷蔵庫があるので毎日違うごちそうを食べることができ、バイクに載って通勤もできる。レベル4は3ドルを「はした金」と感じ、学校へ12年以上通え、飛行機で旅行でき自家用車も持てるし、蛇口からはお湯もでる。

バブルチャート

バブルチャート
筆者らはWorld Helth Chartというバブルチャートを公開している。デフォルトでは上記の所得レベルを横軸、平均寿命を縦軸とし、1800~2018年までの各年の国ごとのプロットをみることができる。各国は人口に応じてより大きな円で描かれているので「バブル」チャートと呼ばれている。
縦軸・横軸は他の指標へ切り替えることもできるので、いろいろ見てみると面白いかもしれない。
出典は巻末にびっちりと書かれている。ちゃんと確認するべきなのだが、たいへんさに躊躇している。

バブルチャートを動かしてみた

1966年の日本
バブルチャートによると1900年頃はイギリスとスイスだけがかろうじてレベル3に到達しており、ほとんどの国の平均寿命は50歳未満である。私が生まれた1962年は日本はまだレベル2である。しかし平均寿命は70歳ほどあり、他の先進諸国とも同等である。1966年にはレベル3に到達している。ちょうど私が物心ついたころだろうと思う。そう言えば毎夜近くの銭湯に家族で行っていた記憶がある。お風呂がなかったのだ。バイクはあったと思う。そのころは冷蔵庫やテレビ(確か当初は白黒だったと思う。カラー放送を示す「カラー」の文字が白黒で写っていたような朧気な記憶がある。)もあった筈だ。
なるほど、確かに1960年代日本はレベル3に到達したばかりだったという説明と記憶が概ね一致する。
このチャートによると1985年頃日本はレベル4に到達したらしい、つまり平成生まれの人にはレベル3時代は生まれる前の話のようだ。

知識のアップデートが必要

アップデート
さて、バブルチャートでお隣中国の様子をみてみると良いかもしれない。人口が多いので円が大きいから見つけやすい。1960年は最悪に近い。所得レベルはレベル1で平均寿命が30歳ちょっとしかない。ほんの60年前の話に過ぎない。
そして、その後は急激に成長し、2018年はレベル3で平均寿命が75歳を越えている! 自分が物心ついた頃よりも現在の中国の所得レベルは高いのだ。「平均値」のマジックなのかもしれないが、中国は人口が非常に多いため平均値マジックは効きにくい(サンプル数が多ければ正規分布に近づく法則)ので、やはり多くの人はレベル3にいるのではないかと思う。
中国の都会の人はそれなりの生活をしているだろうとは思っていたけど、より多くを占める筈の農村の人も同様にレベル3に到達しているというふうには考えたことがなかった。
そして、バルルチャートを見る限り、何か特別なことが起きない限り、ここ10~20年ほどでレベル4へ到達する筈である。

世界の人口の増え方について

目からうろこ
今も人口がどんどん増えており、このままいくと食料不足・資源不足で戦争が再び起こるのではないかとの警鐘を聞くけど、本当にそうなるのかは分からないし、成り行きにまかせるしかないと思っていた。
でも、そういうことにはならないらしい。バブルチャートで縦軸に「Babies per woman」(~女性が一生の間に生む子供の人数)を設定してみると、1980年頃からの減り方が著しい。2018年にはほとんどの国(人口の多い中国・インド含む)で3人を切っている。つまり、この傾向が続けば出生率が2を切り、どこかで人口増加はなくなることが期待できる。
実際もう既に子供の人数は20億人程度で安定していて、これらの子供が大人になることで大人の人口が増えるから世界の人口が増えるという状況に到達しているらしい。
際限があるのであれば、食料や資源の問題は解決出来るはずである。これは子供世代をいたずらに心配しなくてよいと言うことなので、なんなくとほっとした。